財形貯蓄のリスクである「元本割れ」についてご存じでしょうか。
利用のしかたによって、せっかくの財形貯蓄の恩恵も台無しになってしまう可能性があります。
4月からついに社会人になります。
将来のため、給料から天引きされる財形貯蓄をするつもりです。
財形貯蓄は、元本割れするって聞いたことあるのですが。
そうです。利用のしかたによっては、元本割れする可能性があります。
財形貯蓄は給料から天引きされるので、自分の意思とは関係なく貯蓄が可能です。しかし財形貯蓄に関しての知識がない場合、元本割れしてしまうこともあるので注意しましょう。
貯金の感覚だったので、元本割れがあるなんて思ってもいませんでした。
財形貯蓄について理解しておけば、元本割れのリスクを避けることができますよ。
この記事では、プライベートバンカーである私の経験や知識、知人のエピソードを交えて、財形貯蓄の基本や元本割れしない方法について紹介していきます。
- 財形貯蓄の基本知識
- 財形貯蓄の金利
- 元本割れを防ぐ方法
財形貯蓄の基本
まずは財形貯蓄についての基本事項を説明します。
給料から天引きされて貯金ができる仕組みですよね。
そうです。毎月の給料から決められた額が天引きされ、貯金として蓄えられます。
ただし、すべての企業が財形貯蓄できるわけではありません。就職した企業に財形貯蓄が存在している場合のみです。
できない企業もあるのですね。
そうです。財形貯蓄がない企業ではできません。
しかし財形貯蓄の有無を理由に、就職を諦める必要はないでしょう。企業選びは制度ではなく、仕事内容など別の要素で選ぶことが大切だと思っています。
企業に財形貯蓄がある場合、企業が契約している金融機関で行うことになります。そのため、自身で金融機関を自由に選ぶことはできません。
給料が振り込まれる金融機関と、財形貯蓄を行う金融機関が別の場合もあります。
このように普通口座を持っていなくても、財形貯蓄の口座が開設できます。ただし、自由に金融機関を選ぶことはできません。
財形貯蓄の種類
財形貯蓄の種類は、3つあります。
財形貯蓄は一つだと思っていました。
みなさんがイメージしているのは、おそらく3種類の中の「一般財形貯蓄」のことです。
プライベートバンカーの経験を交えて、それぞれの財形貯蓄を説明していきます。
一般財形貯蓄
一般財形貯蓄は、自由に使い道が決められる財形貯蓄です。使い勝手が良く、わかりやすいのですが、非課税措置が受けられません。
非課税措置って何ですか?
非課税措置は、利子などに税金が発生しない仕組みです。
メリットとしては、給料から自動的に天引きされること以外にも、利子などに税金が発生しない点が挙げられます。
通常は利子に対して「20%」の税金がかかる仕組みです。しかし財形貯蓄では、この「20%」の税金がかかりません。
しかし、一般財形貯蓄では上記の非課税措置が受けられないので、利子などに対して「20%」の税金がかかってしまいます。
財形年金貯蓄
財形年金貯蓄は、年金を目的としたものです。60歳になってから年金として、5年以上の期間で受け取るための貯蓄となります。
60歳になってやっと引き出せるのですか?
途中で引き出すこともできます。しかしその場合はデメリットがあります。
基本的には60歳になったあとに引き出しますが、途中解約もできます。
ただし家庭の事情や災害などの緊急の場合は、非課税措置を受けられることもあります。
緊急時は考慮されるのですね。
でも、60歳まで同じ企業に勤めているかどうか不明です。
たしかに若い人にとっては、約40年後のことなんて予測不可能ですね。
しかし転職しても、2年のうちに手続きをすれば財形貯蓄を転職先の企業に移動することが可能です。ただし、転職先の企業に財形貯蓄がある場合に限ります。
財形年金貯蓄は、少し使いにくいかもしれません。
財形住宅貯蓄
財形住宅貯蓄は、住宅の購入を目的にした財形貯蓄です。積み立てを5年以上継続することで、住宅の購入やリフォーム費用などに使用すれば非課税となります。
持ち家ではなく、ずっと賃貸に住み続ける人には関係ないですか?
そうですね。賃貸と決めている人には無関係です。
財形住宅貯蓄は、使用目的が限定されているため、使いづらいと感じてしまう人も多いでしょう。
プライベートバンカーの立場から言うと、資金の利用目的が決まっていない場合は、一般財形貯蓄が良いでしょう。
財形貯蓄の金利
金利ってどれくらいなのでしょうか?
今の日本は低金利となっており、中央労働金庫でいうと「0.015%」くらいです。
金利は、あまり期待できないと言えるでしょう。
40年積み立てたわりには、利子が「11,383円」というのは少ない印象です。
あくまでも「同じ金利が40年続いたら」という仮定での試算です。
金利は変動するため、実際にはどれくらいの利子になるのかは、誰にもわかりません。プライベートバンカーである私の意見としては、次の通りです。
一般財形貯蓄は非課税の対象外です。しかし一定額の積み立てを毎月継続するという意味では、金融機関の信用を上げるのに役立ちます。
これは将来銀行からお金を借りる場合に、有利に働くということです。
元本割れについて
ここまでの説明では、元本割れの心配はなさそうなのですが。
財形貯蓄自体で元本割れはしません。問題なのは、引き出すときの手数料です。
財形貯蓄は引き出す際、手数料がかかります。ATMで時間外や休日などに引き出したとき、手数料が発生するのと同じです。
財形貯蓄は、その金融機関に普通口座をもっていなくても契約することができます。そのため財形貯蓄のお金を引き出す場合、自身の口座のある他の金融機関への振り込みが必要です。
その際に振込手数料がかかってきます。
手数料は結構高いですね。
そうです。この手数料が場合によっては、元本割れの原因となります。
10年間も積み立てしたのに、赤字になってしまうのですね。
そうですね。このように手数料のことを理解していないと、元本割れしてしまう危険性があります。
では元本割れを無くすためには、どうすれば良いのでしょうか。次項に、プライベートバンカーである私のおススメの方法を紹介します。
元本割れを防ぐ方法
元本割れを防ぐ方法はあるのでしょうか。
元本割れを防ぐ方法はあります。
財形貯蓄で元本割れを防ぐには、財形貯蓄を契約した金融機関に普通口座を作っておきましょう。財形貯蓄を引き出す際、同じ金融機関の普通口座なら手数料なしの場合が多くあるからです。
さらには引き出し時の手数料を、事前に調べておくことも大切となります。手数料の条件が設定されている場合、事前に調べておくことで回避できる可能性があるためです。
・普通口座を作っておく
・引き出したときの手数料の条件を調べておく
プライベートバンカーである私の経験から言うと、金融機関側の人は元本割れについて教えてくれません。そのため、自分の貯蓄は自分で守る必要があると言えるでしょう。
まとめ
今回の記事では、財形貯蓄の基本や元本割れしない方法を紹介しました。
元本割れがあるなんて、思ってもいませんでした。
そうですね。知らなかったら何十年後かに損してしまう可能性もあったでしょう。
プライベートバンカーである私の意見としては、貯金に自信がない人にとって財形貯蓄自体はとても良い制度と言えます。財形貯蓄は、資産形成に役立てられるでしょう。
また自分で貯金ができる人は財形貯蓄ではなく、積み立て資産や金利の高いネットバンキングを選択しても良いでしょう。ぜひこの機会に、資産形成について考え直してみるのも良いかもしれません。