今回は日本のプライベートバンクについての情報です。プライベートバンク(PB)とは一般にはなじみがないものですが、富裕層は当たり前のように使っているものです。
そんなプライベートバンクを知るために、プライベートバンク発祥のスイスと、日本を比較しながら見ていきましょう。
スイスのプライベートバンクから影響は受けているのかな?
やっぱり、日本のプライベートバンクが安心な気もするよね。
そのあたりも含めて、日本のプライベートバンクの特徴をご紹介していきます。プライベートバンク発祥のスイスとのちがいもご理解いただけると思いますよ。
・日本のプライベートバンクについて知りたい方
・プライベートバンク発祥のスイスについて知りたい方
・それぞれのちがいを知りたい方
では、まず日本のプライベートバンクから解説していきますね!
日本のプライベートバンクってどんなの?
日本のプライベートバンクの紹介の前に、まずはプライベートバンクはどういったものかを簡単に説明します。
プライベートバンクとは、経営に無限責任を負うプライベートバンカーが経営する銀行(スイス発祥)です。
同じプライベートバンクでもスイスと日本では内容はちがう部分もあります。まず日本のプライベートバンクの特徴からご紹介していきます。
無限責任とは・・・
無限責任とは、もし顧客の資産を毀損してしまった場合、プライベートバンカーも一緒になって責任を取るということ。
顧客とバンカーが運命共同体となる。そうした献身的な姿勢がプライベートバンクというブランドを築いたと言ってもよい。
顧客層と提供サービス
日本のプライベートバンクも富裕層向けにサービスを提供しています。スイスのように顧客が王族や貴族ではなく、一般の富裕層が利用することが一般的。
資産承継や法人での資金調達、不動産や税金の相談など、このようなものを多岐にわたり安全に資産を運用する業務、またはコンシェルジュ業務も行います。
業務内容
- 資産継承や法人での資金調達など法律・不動産・税金といった多方面で富裕層の資産を守る業務
- 安全に資産を運用する業務
- コンシェルジュ業務
万が一の場合は、無限責任のパートナー(プライベートバンカー)が個人資産を含めて責任を負う、そのため情報秘匿性、信頼度が高く、富裕層から重宝されています。
日本でも無限責任はある?
残念ながら日本では、有限責任になってしまいます。日本では銀行が破綻しても戻ってくるお金が限定的(ペイオフは1,000万円)です。
これ以上は保証がありません。あと運用担当者が、退社するなどの理由でコロコロ変わることもあります。
銀行員もキャリアアップを目指しますからね。専属のプライベートバンカーが頻繁に変わってしまうのでは、顧客からしたらなんとも言えませんよね。
最悪の場合だと、手数料だけ取れたからもう退職しようとなるケースです。これではもはやプライベートバンクのメリットもなにもありません。
このあたりはスイスなどの伝統的なプライベートバンクとは差がありますね。
・有限責任⇨銀行が破綻しても戻ってくるお金が限定的(ペイオフは1,000万円)
・運用担当者が退社するケースもしばしば、高い手数料だけ取られてマイナスも
・無限責任⇨仮に銀行が破綻しても全額返ってくる
・運用の失敗による損失の補填はない
・プライベートバンカー個人に責任が結びついている⇨顧客とWinーWinな関係
日本のプライベートバンク
では、日本のプライベートバンクについてより詳しく見ていきましょう。申請条件や、日本にも存在するファミリーオフィスの存在についてもご紹介します。
申請条件と注意点
日本のプライベートバンクにも厳しい申請条件があります。最低でも1億円以上の預け入れが必要で、顧客カードの紹介も重要です。
信用情報や資産状況も検証され、慎重な審査が行われます。
プライベートバンクの解説条件
- 最低1億円以上の預入資産(スイスの老舗PBでは約10億円~)
- 個人の信用情報や資金情報(PL、BSなどの提出)
- 顧客からの紹介(スイスの老舗PBの場合は特に必要)
以上の審査に通ると口座開設が可能となります。
ファミリーオフィスは日本にも存在
プライベートバンクの上位互換のファミリーオフィスというサービスもあります。こちらは一般的に1億ドル以上の資産が必要と言われています。日本だと100億円以上です。
プライベートバンクのさらに上級版!『ファミリーオフィス』
- その一族限定の資産管理会社(非公開会社)
- 一般的に1億ドル以上の資産が必要
- 19世紀アメリカでジョンロックフェラーがファミリーオフィスを設置⇨その後、モルガン家なども相次いで設置
- スイス、アメリカ、シンガポールなどで発達
最上級版のプライベートバンク、ファミリーオフィスも日本に存在します。これは一族限定の資産管理会社で、一族の資産をしっかりと管理し、承継していくためのサービスが提供されています。
日本のプライベートバンクの歴史と現在
こちらでは、プライベートバンクの歴史について見ていきましょう。日本のプライベートバンクを知るためにもまずは、プライベートバンク発祥のスイスから解説していきます。
スイス銀行ってそもそもなに?
まずはスイスから見ていきましょう。よくスイス銀行という表現を聞かれると思いますが、実はスイス銀行という正式な名前の銀行はありません。
スイスに本店があるプライベートバンクの総称としてスイス銀行という呼び方が使われています。
調査によると、世界のオフショア資産の約25%(2.7兆ドル)がスイスで運用されているとのことです。
それだけ世界の富裕層はスイスのプライベートバンクを利用していると言えます。
・BCG(Global Wealth 2015:Winning the Growth Game)の調査によると世界のオフショア資産の約25%(2.7兆ドル)がスイスで運用されている
《プライベートバンクの歴史》
14世紀:イタリアのメディチ家がPB業務を開始
17世紀:イギリスやオランダで王室の資産管理にPBを利用
1815年:ウィーン議定書、スイス永世中立へ
1919年:第一次世界大戦の敗戦国の富裕層が永世中立国であるスイスのPBを利用
1934年:スイス銀行法が成立、スイスPBの秘匿性が高まる
スイスでプライベートバンクが発達したのは、永世中立国というものが大きな要因の1つですね。
スイスでプライベートバンクが発達した歴史
ではなぜ、こうもスイスのプライベートバンクは発達したのでしょうか?その理由を解説していきます。
先述したように永世中立国というのがポイントですね。
永世中立国であり、国の政情や通貨価値が安定している
・どの国とも戦争をしない、EUにも加盟せず完全に独立した立場、スイスフランは安全資産
※近年、無限責任のパートナーシップ制を放棄するスイスPBが増えている
日本のプライベートバンク事情とは?
では、気になる日本でのプライベートバンク事情はどうなっているのでしょうか?
基本的に、富裕層の資産運営などは信託銀行などが似たようなサービスを行っています。
しかし日本ではプライベートバンクに関する法律が整っていないこともあり、欧米のプライベートバンカーなどは日本ではやりづらいところがありました。
以前はCitybankやHSBCなど世界的に大きな銀行が、日本でもプライベートバンク業務を行っていましたが、やはり日本の風土に合わない、日本の法律の規制内ではやりづらいということで撤退をしています。
現状日本では、大きなスイスの銀行は2社しかありません。こちらは日本で支社も窓口もありますので、審査が通れば利用が可能です。
日本人の方は、UBSが多いなという印象です。
日本でぞくにプライベートバンク業務を行っていると言われている銀行などは、プライベートバンキングサービスを行っているということです。
このあたりややこしいですが、成り立ちがちがうということですね。
・日本では「信託銀行」が類似サービスを行っている
・スイスの伝統的なプライベートバンクを運営できる法律が整っていない
⇨CitybankやHSBCは日本からPB業務撤退
《日本に支社があるスイスPB》
・UBS
・CREDIT SUISSE
※預入資産2億円~
《日系のプライベートバンキングサービス》
野村証券、大和証券、三菱UFJモルガン・スタンレーPB証券など
スイスの老舗プライベートバンク≠日系のプライベートバンキングサービス
似たようなサービスですが、成り立ちのちがいがありますね。
日本のプライベートバンクを比較
日本のプライベートバンキングサービスでも、株式、債券、不動産など様々な金融商品での運用が行われています。
メガバンク系、証券会社系、外資系にわけて特徴を比較してみましょう。
日本のプライベートバンクの比較
日本にあるプライベートバンクの比較、まずはメガバンク系から見ていきましょう。
みずほ銀行は、最低預入金額が10億円であるプライベートバンキングを展開しています。
みずほ銀行は「みずほプライベートウェルスマネジメント」を設立し、高額な預金者向けに専門的で幅広いサービスを提供しています。
資産運用や資産保全に焦点を当て、クライアントのニーズに合わせた戦略的なアプローチを提供しています。
三井住友銀行は、最低預入金額が5億円で、パークレイスとの合併によって得られたノウハウを積極的に活用しています。
この統合により、国際的な金融市場やグローバルな資産運用において高度な専門知識を提供し、顧客に価値あるサービスを届けています。
三菱UFJ銀行は最低預入金額を非公開とし、特に海外において強みを持っています。
クライアントには国際的な金融サービスやグローバルな資産運用のオプションを提供しており、多岐にわたるニーズに応えています。
SMBC信託銀行は、旧シティ・バンクのPB部門を引き継ぎ、世界的に展開された経験豊富なプライベートバンキングのプロフェッショナルがサービスを提供しています。
これにより、クライアントは高度な専門知識と信頼性のある資産運用サービスを利用できます。
- みずほ銀行
- 最低預入金額
10億円 - 特徴
みずほプライベートウェルスマネジメントを設立し幅広いサービスを提供
- 最低預入金額
- 三井住友銀行
- 最低預入金額
5億円 - 特徴
パークレイスとの合併によって得られたノウハウを活用
- 最低預入金額
- 三菱UFJ銀行
- 最低預入金額
非公開 - 特徴
海外に強み
- 最低預入金額
- SMBC信託銀行
- 特徴
旧シティ・バンクのPB部門
- 特徴
2つめは、証券会社系です。こちらも最低預入金額や特徴などを見ていきましょう。
野村証券は、最低預入金額が推定1億円となっており、国内ではNo.1の証券会社として知られています。
高い信頼性と確かな実績を基に、クライアントに対して幅広い金融サービスを提供しています。投資家にとっては、多彩な商品や専門的なアドバイスを利用できる点が魅力ですね。
三井住友銀行は、最低預入金額に特別な基準はなく、個別のニーズに柔軟に対応しています。
また、口座開設のハードルが低めとされており、クライアントにとってアクセスしやすい環境を提供しています。これにより、多様な顧客層に対応してくれています。
三菱UFJモルガンスタンレーPB証券は、最低預入金額が1億円で、外資のノウハウと総合金融の情報力を融合させています。
これにより、クライアントに対して国際的な金融市場における高度なサービスと情報提供を行っています。
外資系ならではのグローバルな視点が投資戦略に新たな可能性をもたらしています。
- 野村証券
- 最低預入金額
推定1億円 - 特徴
国内No.1の証券会社
- 最低預入金額
- 三井住友銀行
- 最低預入金額
基準はなく個別対応 - 特徴
口座開設のハードルは低め
- 最低預入金額
- 三菱UFJモルガンスタンレー(旧メリルリンチ)PB証券
- 最低預入金額
1億円 - 特徴
外資のノウハウと総合金融の情報力の融合
- 最低預入金額
最後に外資系を見ていきましょう。まず、クレディ・スイスは最低預入金額が5億円となっており、その歴史は160年以上にわたります。
信頼性と歴史の長さが、特徴と言えますね。一方、UBSは世界最大のプライベートバンクとして知られており、最低預入金額は2億円です。
その規模の大きさが、クライアントにとって強力なサポートと多岐にわたるサービスを提供できる要因となっています。
ロンバー・オディエは家族経営の老舗プライベートバンクであり、最低預入金額は1億円です。
家族経営ならではのアプローチや伝統的な価値観が、クライアントとの信頼関係を築く上で重要な役割を果たしています。
最後に、ジュリアス・ベアは最低預入金額が非公開であり、ピクテ銀行など大手の専業プライベートバンクの一翼を担っています。
その非公開性が、個別のニーズに柔軟かつ効果的に対応することを可能にしています。
- クレディ・スイス 最低預入金額:5億円、特徴:プライベートバンク160年以上の歴史
- UBS 最低預入金額:2億円、特徴:世界最大のプライベートバンク
- ロンバー・オディエ 最低預入金額:1億円、特徴:家族経営の老舗プライベートバンク
- ジュリアス・ベア 最低預入金額:非公開、特徴:ピクテ銀行など大手の専業プライベートバンク
日本のプライベートバンクを選ぶメリット
国内の税制や法務に精通した日本のプライベートバンクには数々の利点があります。
異なる国々では、プライベートバンクの運用益にかかる所得税や相続・贈与に関連する税務、そして事業承継の手法や不動産の取引慣習など、富裕層が求める専門的なアドバイスが異なります。
国内のプライベートバンクは、日本の税制・法務や商習慣に関する広範な知識を有しており、これによりクライアントに対して適切な戦略を提案できます。
さらに、各国の税制や会計制度は頻繁に変更されるため、これに迅速に対応することが難しいことがあります。
これにより、国内での資産運用や相続計画に関するアドバイスが信頼性高くなります。
顧客が専門的な知識を持っていなくても、すぐに専門家に連絡し調査してもらえるため、クライアントは安心してサービスを受けることができます。
外資系のプライベートバンクでは契約書や説明書が英語で提供されることが多く、日本語対応が難しい場合もあります。しかし、日本のプライベートバンクはコミュニケーションから書類の手続きまで、全てを日本語で行うことができます。
また、日本の文化や商慣習に精通しているのも強みで、「堅実で慎重に運用したい」といった日本人特有の価値観に合ったサービスを提供できるという利点があります。
日本のプライベートバンクを選ぶデメリット
資産を増やす運用実績が乏しいという点において、一般的には、日本のプライベートバンクは資産の保全に焦点を当てており、一方で海外のプライベートバンクは資産の積極的な運用に強みを持っていると言われています。
日本では最近まで個人による投資(資産運用)が広まったと言えますが、これが欧米では100年以上も前から行われているという歴史的な背景が影響している可能性があります。
例えば、スイス系のプライベートバンクは、世界中の様々な債券にアクセスでき、クライアントに多様なポートフォリオを提案しています。
また、日本の金融機関が少なく扱わない有価証券担保融資を活用し、レバレッジをかけた投資を提案することもあります。
このような資産を増やすノウハウは、海外のプライベートバンクの大きな強みとされています。
一方で、売買手数料は投資商品を売買するたびに発生する手数料であり、その金額は一定割合となります。
最近では、日本の金融庁がフィデューシャリー・デューティー(受託者責任)に関する監督を強化しており、一部の金融機関は未だに「売買手数料型」の報酬体系を維持している場合があります。
これに対して、多くの海外のプライベートバンクが採用している「資産基準手数料(管理手数料)」は、預かり資産の残高に応じて手数料が発生します。
この手数料には、カストディ費用(管理費用)や売買費用が組み込まれており、期間中に発生する売買の影響を受けずに一定です。
日本と海外で手数料体系が異なるため、どちらが有利かを一概に言うことは難しいですが、日本の売買手数料型では「不必要な売買を勧めて手数料を得たい」といった誘因が働く場合があるので注意が必要です。
まとめ
いかがでしたでしょうか?日本のプライベートバンクの成り立ちや特徴などをご紹介してきましたが、日本のプライベートバンクと海外のプライベートバンクはそれぞれちがいがありますが、内容をよく吟味のうえご自身のニーズにあうプライベートバンクを探してくださいね。
日本には、日本ならではのサービスや魅力もあるので、安心安全な運用が可能ですね。
メリット | デメリット |
---|---|
日本の税務・法務や商慣習について豊富な知識を持っている すべてが日本語でできる 堅実で慎重な運用ができる | 海外に比べ投資が積極的ではない 手数料が負担になる場合がある |
最後までお読みいただきありがとうございました。次回の記事もお楽しみに!