今年も世界中で異常気象による災害が起こってしまったようですね。あなたもニュースでご覧になっているでしょう。
そこで、投資に関係があり、最近よく耳にする「TCFD」について、初心者でも理解しやすいように説明していきたいと思います。今後、日本の中小企業でも、必ず関わらなければならない重要なものになっていきますので、この機会に覚えておきましょう。
TCFDって何ですか?
なぜ大切なの?私の会社にも関係ある?
それでは、あなたの疑問をクリアにしていきましょう!わかりやすくご説明しますね。
- TCFDの基本的な概念
- TCFDの目的
- 情報開示の重要性
- 社会的意義
- 投資家との関連
TCFDとは?わかりやすく説明
「TCFD」とは、「Task Force on Climate-related Financial Disclosures」の略で、日本語でいうと「気候関連財務情報開示タスクフォース」のことです。なにかというと、企業が気候変動によってどんな影響を受ける可能性があるか、またその対策はどうなっているかを明らかにするための国際的な枠組みとなっています。
タスクフォースってドラマでやってたわ。
タスクフォースとは、何かを解決するために作られたチームのことです。
日本でも、東証上場企業には開示が義務付けられており、今後は中小企業へも拡大していくことは間違いないでしょう。
なぜ重要なの?
TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の重要性は、気候変動が企業のお金の問題にどれだけ大きく影響するか、という点にあります。気候変動によって、例えば自然災害が増えると、企業の工場や事業所が壊れたり、商品を運ぶルートが寸断されたりするリスクがあるのです。
震災の時は高速道路が使えなかったわ。
流通がとまってしまい、インフラも使えなくなりました。
こういったリスクを事前に知っておくことは、企業自身はもちろん、その企業に投資する人たちにとっても非常に大切になります。なぜなら、気候変動によるダメージが企業の経済状況に大きく影響するからです。
地球の気候変動や自然災害は、企業にダメージを与えるのね。
気候変動によるリスクを事前に把握することは、投資家にとっても非常に重要となります。
TCFDは、企業が気候変動によるリスクやビジネスチャンスをきちんと理解し、それを自分たちのビジネス計画にうまく取り入れるためのガイドラインを提供するものです。
この枠組みを使うことで、企業は気候変動がもたらす経済的な影響をはっきりさせ、それに基づいて長期的に成り立つビジネスプランを作り出せます。つまり、気候変動問題をビジネスにどう組み込むか、という点で企業に道しるべを提供するわけです。
投資家も、より適切な投資判断ができるのですね。
地球環境関連のESG投資などもあるので、投資家のための大事な情報源となっています。
ESG投資とは
ESG投資とは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の3つの要素を考慮した投資です。
- 環境については、地球環境や気候変動などの問題を指します
- 社会については、人権や労働環境などの問題を指します
- ガバナンスについては、企業の経営体制や透明性などの問題を指します
情報開示
TCFD情報の情報の開示は、企業が気候変動に対してどのように責任を果たしているかを明らかにし、健全なビジネス環境を促進するために役立ちます。
- 投資家保護の観点
投資家が企業の財務リスクを適切に評価し、不当な損失を避けるために必要です。 - 企業の経営戦略の観点
リスクを適切に把握し、それを経営戦略に反映するのです。これにより、未来の不測の事態への備えが可能となり、競争力を維持できます。 - 社会全体の観点
企業が財務リスクを適切に評価し、投資家が気候変動対策に積極的な企業に投資することが、社会全体の気候変動対策に貢献できるでしょう。
投資家が求めているもの
TCFDは、世界中の政府や金融機関からの支持を受けており、国際的に認められた基準として幅広く用いられています。特に日本では、2021年に金融庁がTCFDに基づく情報開示を推奨する方針を発表し、今後はますます需要が高まるでしょう。
今後、気候変動がより重要な問題となることが予想されます。
私も心配です。
このような情報公開を通じて企業は持続可能な成長と発展を達成することができるでしょう。企業が気候変動という大きな課題にどう対応しているかを示し、同時に企業の将来の成功に向けた道を示すものとなるのです。
- TCFDの推奨する4つの枠組みに沿った報告が役立つ。
- 企業が気候変動リスクをどのように監視しているかを明らかにすることが重要。
- リスクと機会の両面からの情報提供は、投資の意思決定に不可欠。
- 企業がどのように気候変動リスクを認識し、戦略に組み込んでいるかを報告するべき。
- リスクの増減が財務にどのように影響するかを示し、具体的な財務影響に関する情報は投資家にとって非常に役立つ。
- 温室効果ガスの排出量などの過去の実績は、企業価値を分析する際に有益な情報。
たくさんあって難しそうですね。
簡単に言うと、投資家やアナリストは企業が気候変動にどう対応しているか、それが財務にどう影響しているかを知りたいと考えています。
4つの主要な推奨事項
TCFDは、企業が気候変動にどう対応しているかを理解するために、4つのテーマに基づく情報開示を求めているのです。
具体的に教えてください。
これらのテーマは、企業の気候変動への準備状況や、リスク管理能力を示す重要な指標となります。
それぞれのテーマを詳しく見ていきましょう。
ガバナンス
ガバナンスは、企業が気候変動リスクをどのように管理しているかに関する情報です。企業の経営陣や取締役会が気候変動にどのように取り組んでいるか、その過程や責任の所在を明確にします。
ガバナンスですね。
ガバナンスは、気候変動のリスクに対して真剣に取り組んでいるかを判断する基準になるものです。
良いガバナンスは、持続可能なビジネス戦略とリスク管理の基礎となります。
戦略
戦略では、気候変動が事業に与える影響についての分析が求められます。気候変動が企業の製品やサービス、そして市場にどのような影響を及ぼすかに焦点になるでしょう。
大事なのは分析と戦略ですね。
気候変動がビジネスモデルにどう影響するかを理解することで、企業はより適応力のある戦略を立てられます。
これにより、将来の不確実性に強い企業となることができるのです。
リスク管理
リスク管理では、企業が気候関連リスクをどのように評価し、管理しているかを明らかにしていきます。これには、リスク評価のプロセスや、それに基づく意思決定の方法が含まれるでしょう。
確かに、リスク管理は最重要ですね。
効果的なリスク管理は、気候変動による損失を最小限に抑え、ビジネスチャンスを最大化するのに役立ちます。
企業がリスクに対してどれだけ準備ができているかを示す重要な指標です。
指標と目標
指標と目標では、企業が設定した気候変動に関連するリスク対策の目標と、それを測定するための指標が求められます。これにより、企業の進捗とリスク対応の効果が可視化されるでしょう。
異常気象もビジネスや投資に大きな影響があるのか。
具体的な目標と指標を持つことで、企業の気候変動対策が具体的で透明性のある測定可能なものになります。
企業はより透明性を持ち、投資家は適切な投資判断ができるのです。
日本の企業の開示情報
金融庁のサイトによると、開示された企業の例として紹介されています。これは、誰でも参照することができます。
- J.フロント リテイリング株式会社
- 株式会社リコー
- 株式会社丸井グループ
- カゴメ株式会社
- 株式会社オカムラ
- セイコーエプソン株式会社
- 不二製油グループ本社株式会社
- 豊田合成株式会社
- 味の素株式会社
- 旭化成株式会社
- 東京瓦斯株式会社
- 第一生命ホールディングス株式会社
- オムロン株式会社
シナリオ分析
TCFDの中でも特に重視されているのが「シナリオ分析」です。膨大なデータを必要とするので、国際エネルギー機関IEA(International Energy Agency)の2050年までのシナリオ分析をベースにするのが一般的でしょう。
仮説に基づいたシナリオを作成して、危機管理などのリスク分析をしていきます。
この「シナリオ分析」とはどういうものですか?
この分析は、気候変動が進行した未来を想像し、それが企業にどのような影響を及ぼすかを探る方法です。では、具体的にどのようなことをするのでしょうか?そして、なぜこれが重要なのか、初心者にもわかりやすく説明しましょう。
シナリオ分析の役割
シナリオ分析は、異なる気候変動の未来を想定し、それぞれのシナリオで企業にどのような影響が生じるかを分析するプロセスです。たとえば、「気温が1.5度上昇した世界」や「気温が2度以上上昇した世界」など、複数のシナリオを設定します。これらのシナリオを通じて、企業は気候変動によるリスクや機会を評価し、未来に備えられるのです。
シナリオに基づいて、どのような影響があるかを分析するのね。
たとえば、農産物の供給が不安定になる可能性や、エネルギー価格の変動などです。
- 低温上昇シナリオ
「気温が1.5度上昇した場合」は比較的穏やかな変化を想定しますが、それでも農業や水資源、エネルギー需要などに変化が生じる可能性があります。 - 高温上昇シナリオ
「気温が2度以上上昇した場合」では、より深刻な影響が考えられるでしょう。たとえば、海面上昇による土地の喪失、頻繁な気象災害、健康へのリスクなどです。
なぜシナリオ分析が必要か?
シナリオ分析を行うことで、企業は気候変動によるリスクを具体的に理解し、それに基づいて戦略を立てられます。気候変動は徐々に進行するため、短期的な業績だけでなく、長期的な持続可能性を考えることが重要です。
シミュレーションのようなものかな?
シナリオ分析の結果を公開することで、投資家やその他の利害関係者に対して、企業が気候変動リスクを真剣に考えていることを示せます。
シナリオ分析は、気候変動というグローバルな問題に対して、企業がどのように対応していくかを明確にするための有効なツールです。
分析により、回復力のあるビジネスモデルを備え、将来にわたって競争力を保持できるのです。
炭素税とは
炭素税とは、二酸化炭素(CO2)の排出に応じて課される税金のことをいいます。
二酸化炭素に対する税金ですか?
将来的に、炭素税の計算も必要になってきます。
- 目的
炭素税の目的は、地球温暖化対策として二酸化炭素の排出を抑制することです。税金を通じて、企業や個人が環境に優しい選択を促します。 - 課税対象
化石燃料の使用や電力の消費など、CO2を排出する活動(車の運転や工場の稼働、電力の消費など)に対して課されるものです。 - 課税方法
排出されたCO2の量に応じて計算され、より多くのCO2を排出するほどより多くの税金がかかります。 - 効果と影響
炭素税は、CO2排出を減らす効果が期待されますが、企業や個人の経済活動に影響を及ぼす可能性もあるようです。税金の増加は、製品やサービスのコスト増につながることもあるでしょう。 - いつから
日本ではまだ導入されていませんが、将来的な導入が議論されています。
企業にとってのメリット
TCFDの情報開示は、ただの義務ではありません。これにはいくつかのメリットもあります。
中小企業に向けたポイントを教えてください。
分かりやすく説明すると、以下のようになります。
リスクの識別
企業のビジネスに隠れているリスク(気候変動が原因の自然災害や市場の変動など)を、はっきりと理解できるようになるでしょう。これを把握することで、そのリスクに対処するための計画を立てられます。
投資家の信頼獲得
TCFDに基づく情報を透明に開示することで、企業は投資家により信頼されやすくなるでしょう。これは、投資家が企業をより深く理解し、投資する際の不確実性を減らすのに役立つので大事なポイントです。
長期的な計画
気候変動への対応には長期的な視点が必要でしょう。TCFDに基づく開示は、企業が将来の変化に柔軟に対応できるようにするための長期計画を立てるのに役立ちます。
中小企業におけるTCFD
気候変動はすべてのビジネスに影響を及ぼすため、中小企業もこの流れに適応するのが必要です。
中小企業もTCFDに取り組みます。
中小企業は経済の根幹を成す重要な役割を担っており、気候変動への対応においても重要なプレイヤーです。
では、具体的に中小企業がTCFDにどのように取り組むべきかわかりやすく説明しましょう。
中小企業の参加
TCFDは、中小企業にとって将来的に重要な役割を果たすでしょう。特に、大企業のサプライチェーンに含まれる中小企業にとって、TCFDに準拠した情報の提供は大きなチャンスをもたらす可能性があります。
何から始めればいいのかさっぱりわからない。
最初は簡単なレベルから始めても大丈夫です。
たとえば、自社のCO2排出量やエネルギー使用状況など、現在把握できるデータの開示からスタートしましょう。初期段階では、財務的負担や資源の制限を考慮しながら、徐々に情報開示の範囲を広げていくのが重要です。
そのような過去のデータがあると思います。
中小企業の対応
TCFDへの取り組みにより、中小企業は持続可能なビジネスモデルの構築、リスクの軽減、新たな市場機会の創出など、様々なメリットを享受できるでしょう。これは、サプライチェーン全体の持続可能性にも寄与し、経済全体のレジリエンスの向上に貢献すると期待されます。
中小企業がTCFDの枠組みに沿った取り組みを進めることは、短期的には挑戦かもしれませんが、長期的には事業の持続可能性と成長のための重要なステップです。
気候変動社会全体の大きなテーマですね。
気候変動は避けられない課題であり、それに対応するのは未来のビジネスチャンスを広げるための重要な一歩となります。
コーポレートガバナンスコード
大掛かりなシナリオ作りは大変でしょうけれど、まずはできることから段階的に進めていくことで無理なく取り組めるでしょう。
私の会社では、話題になってないなあ。
日本でも、2021年6月「コーポレートガバナンスコード」に「TCFDにおける情報を開示」するように記載されました。今後、スタンダードになっていくでしょう。
コーポレートガバナンス
「コーポレートガバナンス」とは、ガイドラインとして参照すべき原則や指針を示しているものです。東証1部・2部に上場企業は、原則全項適応します。マザーズとNASDAQに上場している企業は基本原則のみ適応です。
コーポレートガバナンスは、企業の経営を効果的に管理し監督する仕組みのこと。
今日、知りました。
これは企業が株主の利益を最大限に実現するためのシステムであり、不正行為の防止や競争力・収益力の向上、そして長期的な企業価値の増大を目指します。
コーポレートガバナンスコードの改訂
2021年4月2日から、東証1部・2部に上場している企業に対して、コーポレートガバナンス・コードの改訂版が適用されています。
この改訂では、以下の点が強化されました。
- 取締役会の役割と責務の明確化
- 独立社外取締役の人数や役割の強化
- 指名・報酬委員会の独立性・機能の強化
- 株主の権利の保護の強化
また、マザーズやNASDAQに上場している企業には基本原則のみが適用されます。これらの原則は、コーポレートガバナンスの基本的な考え方を示しており、取締役会の役割や内部統制、企業の社会的責任、そして継続的な改善に重点を置くものです。
日本でも適用されているのですか?
2021年6月に「TCFDにおける情報開示」が新たに記載され、これが今後のスタンダードとなることが予想されます。
企業は、健全な経営を実現するために、これらのガイドラインに従い、段階的に進化するコーポレートガバナンスを実践していくことが求められていくでしょう。
まとめ
ここまでTCFDとはどのようなものか、ざっくり理解できましたでしょうか?TCFDの提案に従うことは、企業がお金の面で健全であることを保つためだけではなく、地球温暖化などの気候変動問題に対する社会的な責任を果たす上でも大切です。
これから先、地球温暖化と企業の運営がどのように関係するかを理解し、その変化に対応することが企業にとってさらに重要になるでしょう。